「重力ピエロ/伊坂幸太郎」(新潮文庫)
人の運命はすでに決められているのでしょうか。
生物には遺伝子と呼ばれる設計書が備わり、それは当然人間にもあるもの。
だとすれば、人の運命は、この遺伝子によってすでに決められているのかもしれません。
「人間は遺伝子に操られているんだろ?」
弟・春(ハル)のセリフは、この作品のテーマを象徴しているかのようです。
しかし、物語を読み進めていくうちに、それは決して抗えないものではないというテーマに発展していきます。
"重力"のように万人の身に降りかかる深刻な問題やしがらみ。
ただそれは、意識することで忘れることもできるのではないでしょうか。
あたかも、サーカスの"ピエロ"が陽気に空中ブランコを飛ぶとき、観客が皆、重力のことを忘れてしまうかのように。
「ふわりふわりと飛ぶピエロに重力なんて関係ないんだから」
深刻なことを陽気に伝えるピエロのように振る舞えば、そのうち重力は消えてなくなるのかもしれません。
読書時間:短 ■■■□□ 長
読み易さ:易 ■□□□□ 難
<一節ピックアップ>
「「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ。」春は、誰に言うわけでもなさそうで、噛み締めるように言った。「重いものを背負いながら、タップを踏むように」それは詩のようにも聞こえ、「ピエロが空中ブランコから飛ぶ時、みんな重力のことを忘れているんだ」と続ける彼の言葉はさらに、印象的だった。」
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