「魔王/伊坂幸太郎」(講談社文庫)
安藤には2つの特徴がある。
1つは、何事も深く考察すること。
2つは、自分の思ったことを他人に喋らせることができる「腹話術」の能力を持っていること。
物語の世界は、今まさに新たな国のリーダーが誕生しようとしている。
自国を憂い、強い国家を取り戻すと主張する若き政治家は、多くの民衆、そして世論を味方につけていく。
安藤はファシズム運動に似たこの世相を深く考慮し、危険と感じたこの政治家に「腹話術」で挑もうとするが...。
この作品のテーマは「大衆心理の危うさ」にあると思います。
不満の飽和した社会に強いリーダーが現れたとき、世論は一つになり、歴史の過ちを再び繰り返すことにも繋がるのではないか。
超能力というSF風味をスパイスに、大衆心理の危うさに一石を投じる一冊だと感じました。
<目次>
魔王
呼吸
読書時間:短 ■■■□□ 長
読み易さ:易 ■□□□□ 難
<一節ピックアップ>
「じんわりじんわり、効くんだよ。人間はムードで流されるからな。とにかく、景気が良くなりそうだっていうムードができれば、みんな、動き出す。ようするにみんな、自分だけが馬鹿を見たくないってそれしか考えてないんだ。単純なもんだ。」
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