小説
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?/フィリップ・K・ディック」(ハヤカワ文庫SF)
シンプルなストーリーで、且つ、今では一般的になったSFコンテンツ(アンドロイド、レーザー銃など)を作中に用いているので、たいへん読みやすく面白い作品でした。
フィリップ・K・ディックの創作テーマのうち、「人間のアイデンティティ」について大きく触れている作品であると思います。
人間を人間たらしめる要因は「共感(エンパシー)」にあり、人間とは、集団に属し、互いに共感し合えて、初めて人間と定義づけられる。
この作品で得ることができた「人間とは何か?」の問いに対する1つの答えです。
また、別の創作テーマである「本物とは何か?」へのアプローチも大変興味深いものがありました。
作中終盤に登場する「電気ヒキガエル」。
妻の'イーラン'に指摘されるまでは、'リック'にとって「本物のヒキガエル」であったに違いありません。
本物がどうかという基準は、個人の内面的な価値観にこそあるのではないか。
これも1つの答えなのでしょう。
アンドロイドである'レイチェル'が、'リック'の所有する「本物の羊」を殺してしまうシーンは、「人間のアイデンティティとは何か?」そして「本物とは何か?」を、著者から問いかけられるような印象的なものでした。
<関連書籍>
・「一九八四年[新訳版]/ジョージ・オーウェル」(ハヤカワepi文庫)
読書時間:短 ■■■■□ 長
読み易さ:易 ■■□□□ 難
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