「戦争にチャンスを与えよ/エドワード・ルトワック」(文春新書)
大東亜戦争(太平洋戦争)での敗戦以降、非戦争、非武装を旗に掲げる日本人にとって衝撃的ともいえるこの書籍がいま注目されています。
中東情勢、イスラム国(IS)によるテロ、そして隣国の脅威が戦争に対する関心を高めているのでしょうか。
著者は、米戦略国際問題研究所(CSIS)の上級顧問。国防アドバイザーとして戦略の世界において高く評されている人物の一人です。
本著の大きなテーマである「紛争への大国の介入主義」に対する問題提起は、目から鱗の内容でした。
『戦争には目的がある。その目的は平和をもたらすことだ。』
戦争による喪失、疲弊を極めた当事国は、やがて戦争終結に踏み切り、その後のプロセスとして平和がもたらされるというのです。
この主張からすると、小国間紛争への大国や国連、あるいはNGOの介入は戦争を凍結することになり、それはかえって戦争を長引かせ、結果的に平和へのプロセスの障害になっているということになります。
例として挙げられているパレスチナ難民。
難民キャンプに収容されている人々は、すでに国の再建に対する動機はなく、増すのは憎悪ばかり。そのうえ、キャンプの中でその次の世代が育っているといいます。
こうした実情を知ると、果たして大国による軍事介入がすべて正しいのかという疑問が生まれてきます。
「戦争にチャンスを与えよ」のタイトルにふさわしい問題提起に、戦争というものを考える機会を与えてくれる一冊だと思います。
<目次>
1.自己解題「戦争にチャンスを与えよ」
2.論文「戦争にチャンスを与えよ」
3.尖閣に武装人員を常駐させろー中国論
4.対中包囲網のつくり方ー東アジア論
5.平和が戦争につながるー北朝鮮論
6.パラキシカル・ロジックとは何かー戦略論
7.「同盟」がすべてを制すー戦国武将論
8.戦争から見たヨーロッパー「戦士の文化」の喪失と人口減少
9.もし私が米国大統領顧問だったらービザンティン帝国の戦略論
10.日本が国連常任理事国になる方法
読書時間:短 ■■■□□ 長
読み易さ:易 ■■■■□ 難
<一節ピックアップ>
「介入主義とは、現代の大いなる病だ。とりあえず介入するだけの力を持つ国の首脳が、「人道主義」の美名のもとに、遠隔地のほとんど知識もない地域の紛争に安易に介入すれば、たとえ善意にもとづく介入でも、結局は、甚大な被害をもたらしてしまう。すべての責任は、彼らの無知にある。」
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・「日本は本当に戦争する国になるのか?/池上彰」(SBクリエイティブ)
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