「海賊とよばれた男 上・下/百田尚樹」(講談社)
言わずと知れた出光興産の創設者・出光佐三氏をモデルとした主人公、国岡鐵造の生涯を描いた長編小説。
学生時代に石油の莫大な需要を予見した国岡は、その商いを一から学ぶために大手商社への道を捨て、小さな個人商店に身を置くことを選びます。
自ら大八車を引き、小さな顧客を渡り歩く日々。
大手商社マンとなった同窓生の姿に、道を誤ったのではないかと葛藤することもありましたが、店主のひたむきな商いへの姿勢に鼓舞され、初志を貫くことを決意します。
月日が経ち、灯油の卸先が飽和し売上げが伸び悩んでいた矢先、知人の話から漁船に灯油を卸すことを思いつきます。
しかし、既に卸元は大手石油会社が牛耳っているのが現状でした。
それでも国岡はあきらめることなく、誰も思いつかないような奇策に打って出、多くの漁船により安く灯油を卸すことに成功します。
そしてこの勝利は、いつしか国岡が「海賊」とよばれる所以となるのでした。
石油が国を動かし、世界を制する時代に移るにつれ、国の石油機関や軍部、さらには米英メジャーとの熾烈な争いを繰り広げることになります。
日本を守るという一心で戦う国岡の姿は、大変勇ましく感動させられるものでした。
強いリーダーシップを発揮し、強敵に挑んでいくこうした人物像を描く小説がベストセラーになる。
そうした流行の背景には、世界のパワーバランスが大きく変わろうとしている現在、この日本という国の存続に対して、私たちが無意識的に不安を感じているという事実があるのではないかと思いました。
<目次>
第一章 朱夏 昭和二十年~昭和二十二年
第二章 青春 明治十八年~昭和二十年
第三章 白秋 昭和二十二年~昭和二十八年
第四章 玄冬 昭和二十八年~昭和四十九年
読書時間:短 ■■■■□ 長
読み易さ:易 ■□□□□ 難
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