「バカが多いのには理由がある/橘玲」(集英社)
より良い人生を生きるためには「物事をじっくりと考える」ということも必要な要素の一つだと思います。
社会で起きていることについてじっくりと考える。働き方についてじっくりと考える。生き方についてじっくりと考える。
しかし、人の多くは忙しく、物事についてじっくりと考える時間をつくる余裕がないのかもしれません。
橘氏はこの書籍で、人を「ファスト思考(速い思考=直感)しかできない人」と「訓練によってスロー思考(遅い思考)を身につけた人」に分けています。
ときとして、スロー思考が必要な問題が生じた場合においても、なぜ私たちはファスト思考で解決しようとするのでしょうか。
たとえば2桁の掛け算の暗算(36×54)をしようとするとき、私たちは心理的に負担を感じます。
それは、すぐに答えの出るファスト思考(11+23)は快適に感じる反面、すぐに答えの出ないスロー思考は無意識のうちに避けようとする為だといっています。
さらにスロー思考を避ける手段として「スロー思考が必要な問題を無視する」「あらゆる問題をファスト思考で解こうとする」をとり、最終的には「そんなことは私の人生になんの関係もない」と、問題の存在そのものを否認するというのです。
では、スロー思考を避けることでどのような弊害が生じるのでしょうか。
日常、私たちは自分が正しいという意識の中で活動しています。そして、自分の信じるものを基盤として生きています。
しかし、「正義とは、進化の過程の中で直感的に正しいと感じるようになったものである」とした現代の進化論が示すように、ファスト思考はスロー思考が苦手な私たちに「自分が正しいと感じたことだけが正しい」と告げます。
つまり、「自分の信じるもの以外にも正義があるという真理」を見えにくくしているのです。
政治、経済、社会、心理のカテゴリから、ファスト思考から生じた対立、格差、紛争などの事例を紹介したうえで、橘氏はスロー思考による問題解決の必要性を説いています。
私たちの身の回りにはファスト思考向きの情報が溢れています。
マスメディアは視聴者に不快な思いをさせるわけにはいきませんので、ファスト思考向きの情報に加工せざるを得ません。
スロー思考を身につけるためには、必要な情報を適切な場所から収集し、時間をつくり、長期的な視点を持つ必要があります。
いまそこにある問題は、直感的な判断で片付くものなのか、それともじっくりと考える必要があるのか。
まずはそれを見定める力を身につけたいと思います。
<目次>
PROLOGUE 私たちはみんなバカである
Part1 POLITICS(政治)
Part2 ECONOMY(経済)
Part3 SOCIETY(社会)
Part4 PSYCHOLOGY(心理)
EPILOGUE 地獄への道は善意によって敷き詰められている
<一節ピックアップ>
「私たちの社会には複数の「正義」があります。正義とはひとびとが直感的に「正しい」と感じるものですから、それぞれの正義は対等で優劣はつけられません。だとすれば大切なのは、自分とことなる正義を尊重することと、両立できない(トレードオフの)正義の間で折り合いをつける工夫をすることです。」
<あわせて読みたい>
・「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法/橘玲」(幻冬社)
読書時間:短 ■■■□□ 長
読み易さ:易 ■■■□□ 難
↓『じっくりと考えるクセをつけたい!』と思う方は、是非シェアを!
コメント
コメントが見つかりません。