満員電車の階級を考えてみた

2014年10月13日 11:56

『満員電車の階級』


満員電車。そこには知られざる「階級」が存在している。さぁ、明日から高みを目指そうではないか!

・ライニングアップ(整列する者)

ホームで電車を待っている者。言われずとも整列する習慣を身につけた我々にとって、無言で過ごす数分などものの数ではない。


・ドリフトワン(漂う者)

ドア開閉時(ビッグバン)の15.0秒、乗車する者の9割は捕まるものを手にできず人混みの流れに身を任せることになる。身の安定を得ようとやみくもに吊革にしがみつく行為は、全体の潮流を乱すことになりかねず、避けるべき初動のひとつである。

流れを読み、行き着く先で身の安定を確保するという高度な戦略が求められる。

言うまでもないが降りる人が先であり、万が一アナウンスでそれを指摘された場合、我々は猛省しなければならない。


・キープセーフ(安定を手にする者)

ここから初めて乗客として認められる階級となる。吊革など固定されたものを掴み、身の安定というコントロール権を手にした者。

「吊革を持つ者が乗客である」と印象づけたきっかけとなったのが、1972年、ラッシュ時の乗車率が200%を超えたという報道のあった翌月に勃発した、乗車率改善を求める運動「上野駅紛争」である。そのスローガン『乗客に、安全・スペース・吊革を!』はあまりにも有名。吊革だけを手に掲げ、街を行進するデモ隊の姿を誰もが一度は目にしたことがあるだろう。

運動以降に広まった「吊革や手すりなどにおつかまりください」という車内アナウンスは、乗客であれという当時の強い願いが込められている。


・ホールドコーナー(隅に安住する者)

ドアの左右に存在する角に身をあずけ、目的駅までその場に安住する者。ドア開閉時(ビッグバン)に起こる潮流の淀みになる部分であり、乗車時間が短いのであれば、その場を狙う戦術は評価される。

この状態を手にした者は、たいていこの階級に留まる特徴があり、階級上位を狙う者からは「フールザコーナー(隅の愚者)」と揶揄されることもある。


・ハンズフリー(自由を得る者)

網棚列を確保し、吊革を手にし、さらに荷物を網棚に置くことで片手の自由を手に入れた者。

本を読む、スマホを操作するなどの動作に必要なスペースも手に入り、通勤時間を自分の時間として使うことが可能になる。

近年、個人情報、企業情報保護の観点から、荷物忘れのリスクを最重要視するあまり、網棚を使用しない者もいる。自由とリスクは表裏一体であるということを見事に表しているといえる。

彼らはこのポジションを確保したとき「チェック」と宣言する。そう、彼らの狙うものはただひとつ。目の前にある玉座なのだ。


・スローン(王座に座る者)

その姿は威風堂々たるもの。我々は皆ここを目指す。安息を手に入れ、両手の自由を謳歌する。

立ち続ける苦行を乗り越え、潮流に流されることもなく、その場所で自分の時間を有意義に使うのだ。

羨望、嫉妬、様々な感情をもった視線を注がれる中、王は王らしく、毅然と振る舞えば良い。


-- その他のクラス


・アロガント(傍若無人なる者)

そう低い確率でなく現れる、我が道を押し通す者。ルールやマナーという概念に強制的に働きかけ、関わるものに不必要な労力を与え続ける。


・ロック(動かざる者)

その場に固執し、潮流を無視して留まり続ける者。アロガントの亜種であるが、執着という面で突出しているため新たに定義された。

下車できない、乗り降りの邪魔になるなど他人の状況に意識は向かわず、その場所に居続けるという一点に全意識を集中させる。


・リターンスローン(玉座返上)

王は、手に入れた玉座を譲渡することも選択のうちにあることを知っている。そして、その状況が現れると、躊躇なく玉座を譲るのだ。

リターンスローンには絶大な称賛が与えられる。そして、王の地位は、玉座を譲渡してもなお残り続けるのだ。

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